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未来を変えた島の学校

【第2回】答えのないリアルな課題は最高の教材

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日本海に浮かぶ離島の学校、島根県立隠岐島前(どうぜん)高校。

廃校の危機に直面したのをきっかけに、約10年前から地域と協働して高校の魅力化に取り組んできました。
同校で始まった「高校魅力化」のムーブメントは、今では全国にまで広がっています。

教育の、地方の、そして日本の未来を変えるヒントが満載の取り組みについて、同校で学校経営補佐官を務める大野佳祐さんから5回シリーズで寄稿していただきます。

リアルな地域課題に取り組む実践型探究活動

隠岐島前高校の特徴のひとつに「地域課題解決型学習」があります。総合的な学習の時間や学校設定科目を活用した様々な授業で、「答えのないリアルな課題」にチームで挑戦する取り組みを続けています。

隠岐島前地域は、人口減少や少子高齢化が進み、財政的にも厳しい状況が続いています。しかし、見方を変えれば、大人が知恵を絞っても解決できない課題が身近にたくさんあるということです。これからの時代は「答えのない時代」と言われており、今の高校生たちは、複合的に課題が絡み合いながら急速に変化し続ける社会で生きていくことになります。これからの社会で生きていく力は、教室の中だけでは育むことはできません。地域に飛び出し、多様な世代と関わり、時には大きな課題を前に呆然と立ちすくむ経験も必要です。探究活動も提案で終わらせるのではなく、自分たちで手を動かし、もがきながら小さくても実践してみることを大切にしています。

「うまくいかない状況」が探究活動の醍醐味

隠岐島前高校では、およそ1年をかけてこうした探究活動に取り組みます。授業の基本設計は、最初の5分と最後の5分を除いては、基本的には生徒たちが探究するための時間としています。

1年間の探究活動の中で、生徒たちの多くが苦戦するのは「実践」よりも「課題設定」です。住んでいる地域の課題は認識しているものの、自分たちが主体となって解決に向けて動くことを前提にすると、課題を深堀りしていくことが必要になるからです。調べたことを発表するだけであれば、課題をぱっと選べるかもしれませんが、自分たちが実践するとなるとそうはいきません。

また、活動が1年もあるとどのチームにも必ず浮き沈みがあります。メンバー間でうまく折り合いが付けられない。スケジュールがなかなか合わない。外部との調整に失礼があって怒られる。こういった「うまくいかない状況」が探究活動の醍醐味です。意図しない難しい状況の中で、チームでどう乗り越えるか、そういった状況が生徒たちの深い学びにつながり、その先の人生にもつながるのではないかと考えています。

「自分たちにもできることがある」を感じ取る

様々な探究がなされていますが、いくつか実例を紹介したいと思います。

耕作放棄地に関心を寄せていたチームは、実際に使われていない畑の持ち主に交渉し、畑を借りただけでなく実際にあまり手をかけずに育てられる芋を育てることに取り組みました。畑は時間も手間もかかるという認識から、時間のない若者でも手をかけずに耕作放棄地を畑に変える事例を示すことができました。また、収穫時には芋堀りを地域の方々や地元の中学生らと協働することで取り組みの認知を広げることや、実際に収穫した芋を使って地域の産業祭で「芋煮汁」を売って収益まで上げることに成功しました。

「自宅の裏の放置竹林が気になったから」と探究をはじめたチームは、アイデアはなかなか出なくても手が動くチームでした。とにかく放置された竹を何本も切り、竹踏みをつくって介護福祉施設に配っては喜ばれていました。最終的には、探究の過程でたまたま見つけたスマートフォンに対応した「竹スピーカー」の試作品をいくつか作成し、フリマアプリで販売することに成功しました。こうして書くとすばらしい取り組みのように見えますが、実際には本当に泥臭いプロジェクトで、生徒らは毎回ジャージで授業に参加し、教室も竹の端材だらけになったりもしました。

上記の2チームも「地域課題を解決した」とまでは言えないと思います。ただ、彼らが振り返りで語る「解決に向けて自分たち高校生にもできることがあるとわかった」という言葉は、探究活動をはじめる前よりも重みがあります。文章にしてしまうと、あまり労せずに達成できたように見えてしまうかもしれませんが、いずれのチームも本当に様々に苦労をしていました。おそらく途中で投げ出したくなったこともあるでしょう。だからこそ、実感の込もった言葉になるのではないでしょうか。

 

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