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未来を変えた島の学校

【第3回】グローバルとローカルの境界線を越えていけ

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日本海に浮かぶ離島の学校、島根県立隠岐島前(どうぜん)高校。

廃校の危機に直面したのをきっかけに、約10年前から地域と協働して高校の魅力化に取り組んできました。
同校で始まった「高校魅力化」のムーブメントは、今では全国にまで広がっています。

教育の、地方の、そして日本の未来を変えるヒントが満載の取り組みについて、同校で学校経営補佐官を務める大野佳祐さんから5回シリーズで寄稿していただきます。

隠岐島前高校が目指す「グローカル人材」とは?

隠岐島前高校は、「グローカル人材の育成」を教育目標に掲げています。グローカル人材とは「地球的視野で考えながら、足元から実践していける人材」を想定してつくられた造語です。世界中どこにいたとしても、ふるさとを思いながら、自分自身や地域の特性を活かして活躍できる人になってもらいたいという願いが込められています。

私たちはつい、グローバルとローカルを二項対立的に比較してしまいがちですが、どちらにも強みや弱みがあります。グローバルとローカルの境界をひょいと越えて自由に往還し、互いに補え合える関係性を構築できる人材が、これからの時代の「グローカル人材」になると考えています。

そのため、地域の中でどっぷり学ぶことと同じくらいに、地域の外にも飛び出していく「越境体験」を大切にしています。外に飛び出し越境していくからこそ内なる魅力に気づくという体験は、島に暮らしていることでよりリアルに感じることができます。

海外での実体験が「相手に関わろうとする姿勢」を育てる

隠岐島前高校では、毎年、全校生徒のおよそ40%が海外に飛び出していきます。代表的なものとしては、2年生全員が行くシンガポール海外研修があります。同じ島でありながら、隠岐島前地域とは真逆の発展を遂げるシンガポールとの相違点や共通点を探究することに重きを置いています。先に紹介した「地域課題解決型学習」の実践結果を、現地の大学生に向けて英語でプレゼンテーションし、外からの視点でフィードバックを得る機会としても活用しています。

「英語でプレゼンテーション」と書くと、帰国子女が大勢いるような超グローバルな高校をイメージされるかもしれませんが、ほとんどの生徒たちは英語を話すことはできません。話すことはできませんが、その気になれば、単語をつなげたり身振り手振りを交えたりしてコミュニケーションを取ることができます。こうした「やればできるかも」という実体験は、外に飛び出し、難しい状況に置かれるからこそ得ることのできる素晴らしい体験です。本校の生徒たちが、コミュニケーションを取る際に相手に「一歩迫る」ことができるのは、こうした体験をベースにかたちづくられるものだと考えています。もちろん、英語が話せるに越したことはありませんが、仮に英語ができなかったとしても、コミュニケーションが取れると信じて相手に関わろうとする姿勢は、英語ができることよりも大切なことではないでしょうか。

 

世界各地で、そして帰国してからも、輝く生徒たち

シンガポール海外研修の他にも、「グローバル探究」という学年を越えて選抜された生徒たちが、ロシアやブータン(令和2年度はミクロネシアも予定)に飛び出していくプログラムも充実しています。

ブータンへのグローバル探究は毎年テーマを生徒自身が決め、隠岐島前地域との比較を探究するプログラムになっています。ある年のチームは「伝統文化の継承方法」を比較研究し、ブータンにおける伝統文化の優れた継承方法を学びました。探究がはじまった時には「島の伝統文化が消えつつある」とどこか他人事だった生徒たちでしたが、帰国後には自分たちがその担い手になれるかもしれないと認識を新たにし、地元のお母さんたちを巻き込んで島の伝統料理をつくる料理教室や食事会を開催しました。

 

また、ロシアへのグローバル探究では、国の教育センターが主催するインターナショナルキャンプに参加するのですが、プログラムの主たる言語はロシア語です。世界各国から同世代が集まるキャンプの中で、ロシア語がまったくわからない生徒たちは、まず英語とロシア語の両方を理解できる子を探すそうです。生徒たちの頭の中は「この状況を打破するにはどうしたらいいか」とフル回転しているはずです。これこそがまさに「生きる力」ではないでしょうか。帰国後、「毎年うちに来ている外国人留学生も言葉が通じなくて苦労しているはず」と世話役を買って出る生徒も現れました。外に出ることで、内なる見えていなかった課題に気づき、それに対して課題解決の手立てを講じることができるというたくましさを、生徒たちは常に示してくれます。

こうしたグローカルな動きに呼応するように、外国人留学生の寮での受け入れもはじまりました。今年は3名(トルコから1人、ロシアから2人)の留学生が来ています。最初に受け入れた生徒はマレーシア人のイスラム教の生徒でしたが、断食月には生徒らも共に断食するなど異文化を体験させてもらいました。仮に外国に行かなくても、こうして日常や暮らしの中でグローカルな体験ができるのもまた隠岐島前高校の魅力になっています。

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