お子さまの進路設計を考える、すべての保護者のみなさまへ
旺文社

Best wishs for my daughter and son.

interview

先輩たちの物語

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一人でも多く、人と人とのつながりを感じて、「ここに住んでよかった」と思ってほしい


前回に引き続き、有限会社東郊住宅社 代表取締役社長 池田峰(いけだ みね)さんに、同社で運営している入居者向け食堂「トーコーキッチン」での取り組みや、仕事に対する思い、大切にしている考え方について、お話を伺いました。

Profile
池田 峰
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有限会社東郊住宅社 代表取締役社長

池田 峰さん

1973年、神奈川県相模原市生まれ。日本の大学に進学するも自主退学し、アメリカ・アイダホ州の大学に編入して心理学とアートを専攻。卒業後、帰国してグラフィックデザイナーとして就職。その後、広告代理店勤務、ニュージーランド移住などを経て、有限会社東郊住宅社に入社。

https://www.fuchinobe-chintai.jp/toko_kitchen.html

01
interview

大学卒業から今にかけて

──進路はどのように決めたのでしょうか?

池田さん 大学卒業にあたって、私の進路は二択でした。アメリカの大学院に進学して心理学を追究するか、もしくは副専攻で学んだアートを活かした職業に就くか。結局、日本でグラフィックデザイナーとして就職しました。
アートの道を選んだ理由は、人にはそれぞれ適齢期があると思ったからです。心理学は、年齢を重ねて人生の経験値を高めてからのほうが、よりよい研究ができるかもしれない。就職したあとで、大学院に戻って改めて勉強するという選択もあると考えました。
逆に、表現をする仕事は、若いうちにさまざまな経験をするほうが有効だと考えたんです。就職にあたっても、アメリカに残るか、日本に帰国するかという二択がありましたが、英語よりも日本語を活用したほうが表現の幅が広くなるだろうという理由で帰国することにしました。
その後、日本で広告代理店勤務を経て、ニュージーランドに移住。そこでも広告関係の仕事をし、会社の経営もしました。

──現在の仕事と、御社が運営している「トーコーキッチン」について教えてください。

池田さん 2012年に帰国し、家業を継ぐ形で東郊住宅社に入社しました。いわゆる、街の不動産屋です。畑の違う仕事をいろいろとしてきたように映るかもしれませんが、根幹にあるのはどれも同じだと考えています。それは、人と人とをつなぐ存在だということです。どの仕事も、関わる対象が異なるだけで、果たすべき役割や大切にすべき考え方は変わらないと思うからです。
そして、当社でサービスの一環として始めたのが、入居者向け食堂「トーコーキッチン」です。淵野辺駅周辺には、多くの学生さんが住んでいます。そして、新しい土地で一人暮らしをする学生さんやその親御さんには、新生活を始めるにあたって食に対する不安や要望があることに気づき、その解決の一助となるべく、この取り組みを始めました。

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(c)Kenta Hasegawa


02
interview

仕事に対する思いについて

──「トーコーキッチン」では、どんなことを実現したいと考えていますか?

池田さん 当食堂では、入居者の皆さんに健康的な生活をしていただくことを第一に考え、提供する料理はすべて手作りにこだわっています。利用者の方に「おいしい」と言っていただくことが、何よりも嬉しいです。たぶん日本で一番「味どう?」と質問している不動産屋だと思います。
また、食べにきてくださる方とコミュニケーションを図り、不動産会社や食堂のスタッフと利用者という関係ではなく、お互いに個人として接することができる関係性を築きたいと思っています。私が海外への一人旅を通して体感し、学んだことを、この空間を通じて多くの方に知っていただくことが願いなのです。

──そこには、どのような考えがあるのでしょうか。

池田さん 私はこれまでに海外20ヶ国以上を訪れましたが、「また行きたい」と思う場所には、必ず人か食にまつわる思い出があります。ですから、人と交わる場所と食事の両方を提供することで、利用者の方に「また行きたい」と思ってほしいんです。さらに、そうした思いが積み重なって、「淵野辺に住んでよかった」「淵野辺にはいい思い出がある」というように、淵野辺が愛着をもって振り返ることのできる場所になることを望んでいます。
淵野辺に住む学生さんの中には、消極的な理由で住み始めた人もいると思います。そんな人にも「住んでよかった」と思って卒業してほしい。そのためにできることを、私はしています。ここで人と人とのつながりを感じることをきっかけに「淵野辺での生活が楽しい」と感じていただければ、この土地に携わる者としてはこの上ない喜びです。

  • キャプチャ3

    金曜日の朝ごはんは ①朝カレー、副菜、豚汁 ②目玉焼き、副菜二品、豚汁、ご飯。どちらも100円。

  • キャプチャ2

    ある日の定食(500円) 鶏のクリームフリカッセ、副菜二品、豚汁、ご飯。もちろん手作り。

──今後、めざしていることを教えてください。

池田さん 私自身、この食堂で普段から利用者の方と楽しく対話しています。壮大な夢なんてものはありません。考えているのは、利用者の皆さんとのコミュニケーションを一つでも多くとること。そして、利用者の方に笑って「おいしい」と言っていただける機会をどれだけ多くつくれるか、ということだけです。
ある日、話しかけた学生さんから、マンションのオートロックの調子がよくないという相談を受け、食事をしている間に問題を解決しました。そのように、こまめにコミュニケーションをとることで、小事が大事になる前に解決できる可能性は圧倒的に高まります。
しかも、彼はそのやりとりに感動してくれたようで、当社でアルバイトをするようになって不動産の仕事に興味をもち、不動産会社に就職しました。思いもよらないところから夢を見つけるきっかけになれたことを、非常に嬉しく思っています。

  • キャプチャ

    土曜の朝も盛況のトーコーキッチン。

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    社会福祉法人さがみ愛育会が運営する生活介護事業所 キッチンハウスのみなさんが手作りしたクッキーも並びます。


03
interview

これから進路を決める皆さんに向けて

──受験生やその保護者の皆さんに向けて、アドバイスをお願いします。

池田さん 私は、人生の中で今がいちばん楽しいと感じています。年齢や経験を重ねて、考えられることや実現できること、表現できることが多くなって今があるわけですから、当然です。学生さんの中には、「社会人になるのが憂鬱だ」と感じる人がいるようですし、実際にそういう話を聞くこともあります。ですが、「そんなことはない」と断言できます。経験を重ねて、できることや考えられることは増えていくので、今後のほうがきっと楽しくなるはずですよ。
人生において、失敗したり、うまくいかなかったりすることは何度もありますよね。その失敗をつい環境のせいにしてしまいがちですが、そのように考えてしまうのはもったいないです。仕事も勉強も、自己成長のためにするものであり、どんな環境でも行動するのはその人自身です。望んだように進まなかったとしても、捉え方次第で見える世界は変わりますから。
私が最初に入学した日本の大学は、第一志望校ではありませんでした。ワーキングホリデーで行ったニュージーランドも、第一候補ではありませんでした。卒業したアメリカの大学も、結果的には編入するきっかけになった実験をしていませんでした。しかし、どの経験も必要で、それらが今の私を形成していると確信しています。

──ご自身が大切にしている考え方について、教えてください。

池田さん 仮に消極的な選択だったとしても、結果的には自分の意志で選んだ道なのですから、まずはその環境をいかに楽しめるかが重要だと思っています。たとえ目の前に望んでいない結果が出たとしても、それは一生の価値を決めるものではないはずです。どんな経験も、その後の自分を形づくる必要不可欠なピースになると考えています。
それから、なるべく客観性を保つことも大事だと思っています。自分が周囲からどう見えているか、自分が社会の中でどうあるかというのは、自分以外の人が決めることです。客観性よりも主観性が勝ってしまうと、相手とのコミュニケーションがフラットなものではなくなり、人間関係に摩擦が生じやすくなってしまいます。ですから私自身、かつて初めての一人旅で答えを見出してから、客観性を保つことをずっと大事にしています。そしてそれは、楽しく生きるためのコツだとも感じています



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ちょっとの勇気を持って、まずは一歩踏み出してみること。
周囲から、客観的な評価を得ること。
そして、いまネガティブな状態であっても、それは一生の価値を決めるものではない、ということ。

池田さんにお会いできて、たくさんのヒントをいただくことができました。
本当にありがとうございました。

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